「何度注意しても、同じことを繰り返す」
「伝えると反発されるので、声をかけること自体が負担になっている」
「周りの職員がフォローしているけれど、このままでは不公平だ」
こうした状況に、頭を悩ませていませんか。
必要なことは伝えたい。でも、関係を悪くしたくない。強く言いすぎることも避けたい。その間で、管理職が一人で疲れ切ってしまうことがあります。
「問題職員への対応」と聞くと、厳しく注意する方法を思い浮かべるかもしれません。しかし、まず整理したいのは、何が起きていて、どの行動を、どう改善してほしいのかということです。
「困った人」を「困っている行動」に置き換える
「あの人は無責任だ」「協調性がない」
困る出来事が重なると、私たちは相手をひとつの言葉で捉えがちです。しかし、その言葉を本人に伝えても、何を変えればよいのかは明確になりません。
例えば、「報告が遅くて無責任だ」と感じているなら、次のように整理します。
「今月、週次報告の提出が締め切りを過ぎたことが3回あった」
ここまで具体的にすると、話し合う対象が見えてきます。確認するのは、その人の性格ではなく、報告の提出という行動です。
いつ、どのような行動があり、何に支障が出たのか。
この整理が、指導の出発点になります。
同じ「できていない」でも、必要な対応は違う
報告が出ていない。その事実だけでは、理由までは分かりません。
期限が正確に伝わっていなかったのかもしれません。書き方が分からないのかもしれません。他の仕事を優先している場合もあれば、業務量が増え、時間を確保できていない場合もあります。
研修では、背景を考える手がかりとして、次の5つに整理しています。
- 伝わっていない:指示や期待する水準の認識がずれている
- 知らない:必要なルールや手順を知らない
- できない:知識はあっても、実行する技能が追いついていない
- やらない:優先順位や仕事の必要性について認識が異なる
- やれない:業務量や環境などに、実行を妨げる事情がある
これは、職員を分類するためのものではありません。管理職が対応を考えるための視点です。複数の事情が重なっていることもあります。
「なぜ、何度言ってもできないの?」
そう問い詰める前に、
「今回、締め切りまでに提出できなかったのは、どのような状況だったのでしょうか」
と尋ねてみる。事情を聴くことは、改善に必要な手を打つための確認です。
指導は「事実・影響・聴く・要望・確認」の順で
伝え方に迷ったときには、話す順番を用意しておくと、面談の目的を保ちやすくなります。
以下は、報告の遅れを扱う架空の会話例です。落ち着いて話せる場所で、テーマをひとつに絞って伝えます。
① 事実を確かめる
「今月の週次報告は、3回とも金曜17時の締め切りを過ぎてからの提出になっています。私の確認と違うところはありますか」
「いつも遅い」とまとめず、確認できている事実を示します。管理職側の認識に誤りがあれば、修正することも大切です。
② 影響を伝える
「報告を待つ間、チームの集計が止まり、他の担当者の確認作業が翌週にずれています」
「みんなが迷惑している」という曖昧な言葉ではなく、どの仕事に、どのような影響が出ているかを伝えます。
③ 本人の事情を聴く
「報告をまとめる時間は、今、どのように取っていますか。進めるうえで困っていることはありますか」
ここで初めて、担当業務が増えたことや、作成手順でつまずいていることが分かる場合があります。答えを決めつけずに聴きます。
④ 求める行動と、必要な支援を決める
「次回は金曜17時までに提出してください。難しいと分かった時点で、期限前に相談してください。私も業務の割り振りを確認します」
「ちゃんとして」「気をつけて」で終わらせず、何を、いつまでに、どうするかを具体的にします。実行を妨げる事情があれば、管理職側が調整することも決めます。
⑤ 次に確認する日を決める
「来週の月曜に5分ほど、やってみてどうだったか確認しましょう」
指導は、伝えたところで終わりではありません。できていれば、その変化を言葉にする。難しかった場合は、どこで止まったのかを確認する。その積み重ねが必要です。
「気をつけます」で面談を終えない
本人から「分かりました」「気をつけます」と返事があると、管理職は安心したくなるものです。
ただ、その返事だけでは、お互いが同じ行動を思い描いているか分かりません。
「では、次回はどのように進めるか、確認させてください」
そうして、本人の言葉で進め方を話してもらいます。認識がずれていれば、その場で調整できます。
面談後には、確認した事実、本人の説明、決めた行動、管理職側の支援、次の確認日を記録します。記録は、対応の経過を共有し、次に何をするかを考えるために役立ちます。
周囲の職員と、指導する管理職も支える
問題となる行動が続くと、周囲の職員が穴埋めをしていることがあります。
その人たちに「もう少し我慢して」「あなたならできるから」と頼り続けていないでしょうか。本人への指導とあわせて、フォローを担う職員の業務量や負担も確認する必要があります。
そして、適切な指導や支援を続けても、すぐに改善するとは限りません。
管理職が「自分の指導力が足りないからだ」と抱え込む前に、上司や人事担当者と経過を共有し、組織として次の対応を検討することが大切です。安全に関わる行動など、早い段階で組織的な対応が必要な場合もあります。
経営者や上司に求められるのは、「あなたの部下なのだから、何とかして」で終わらせないことです。
職員の改善を支える仕組みと、指導する管理職を支える仕組み。その両方が、職場には必要です。
明日、伝える言葉をひとつ変える
まずは、今困っている行動をひとつ選び、日時と具体的な出来事を書き出してみてください。
そして、「何度言えば分かるのか」の代わりに、事実を確かめる言葉と、事情を聴く質問を用意してみる。
相手を尊重することと、必要な改善を求めることは、両立できます。
本人にも、周囲にも、管理職にも無理が積み重ならないように。具体的に伝え、状況を確かめ、組織で支える。それが、問題行動に向き合うための基本です。
職員への指導に悩む管理職の方へ
あなた日和サポートの「問題社員マネジメント研修」では、事実の整理から、改善を求める面談、反発への対応、指導記録と組織への相談まで、具体的な場面を使って練習します。
「必要なことを伝えられない」「注意しても改善につながらない」「管理職が一人で抱えている」。こうした課題に合わせた研修について、お気軽にご相談ください。
